教えて!!Mr.アパマン

<<一覧へ戻る
H28年度2月度レポート


佐々木

 アップル社に日本の小さな町工場が訴訟を起こしている。
 それはiphonの部品を製造している島野製作所というメーカー。
 島野は、会社の規模は小さいながらも、世界中の有名企業から注文を受け、アップル社とも取り引きし、パソコン用電源アダプタに使われる部品を製造してきた。その島野が独占禁止法違反と特許権侵害でアップルを訴えた。賠償額は約100億円にものぼる。
 2007年アップルはiPhoneを発売し、以降その部品を作る多くの日本の中小企業が下請けとして潤った。島野もアップルの急成長の恩恵を受けた。島野はアップルの要求に対して多大な設備投資を行い応じてきた。
 しかし2012年8月、アップルからの発注量が急に激減。
 アップルは、ただ「ピンが使われる電源アダプタの需要が大幅に減ったため」と答えるだけだった。しかし需要が大幅に減少したなどという事実はなく、アップルが他のメーカーに類似製品を製造させたことが原因と考えられる。
 2社の間には「類似製品の開発などを行わないという合意」があった。他メーカーに発注先を変えたということは、島野独自の技術が流出した疑いがある。これは特許権侵害にあたる。島野の抗議に、アップルは「設計図が違うため、合意違反には当たらない」と答えた。
 島野は、大量の在庫を抱え、生産ラインを停止するにまで至った。2013年5月、事業の継続のため、以前からアップルに要求されてきた部品の代金の減額にも応えざるをえなかった。
 アップルは減額のみならず、納品済み部品のリベートの支払いを要求した。
 そこで島野は2014年8月に独禁法違反と特許権侵害で、約100億円の賠償を求める訴訟を起こした。
 まずはアメリカと日本、どちらの裁判所で審理するかで係争が始まった。アップルと島野の契約時、アップル本社のあるカルフォルニア州の裁判所で解決すると合意していた。
 アップルは「日本での提訴は合意に反し無効」と主張した。島野は「合意は独占禁止法が禁じる(アップル側の)優越的地位の濫用の下で結ばれたため不当。日本国内で審理されるべき」などと反論した。
 2月15日の中間判決では「裁判管轄の合意は、国際事件であれ国内事件であれ、一定の法律関係に基づいた訴えに関して結ばれたものでない限り無効。それは片方の当事者が不測の損害を受けることを防ぐためだ」と指摘。「両社の合意は『契約内容との関係の有無などにかかわらず、あらゆる紛争はカリフォルニア州の裁判所が管轄する』としか定められていない」とし、合意は広範すぎるため無効と判断した。
 国際裁判となると莫大な費用がかかるため、今までは泣き寝入りになるケースが多かった。今後の展開に注目したい。