マンション投資の鉄人

<<一覧へ戻る

第九の鉄人

見まわしてごらん、街の車を。 : ミネルバの梟はたそがれに飛び立つ。

神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)

日本人の貯蓄率が0%になったそうですが、ちょっと早いんじゃあないのと思いました。なぜならば団塊の世代の大量定年までまだ2年有るからです。いやはや、こんな状態で団塊の世代が定年をむかえたら日本経済はどうなってしまうのでしょうか、考えただけでぞっとします。

先日もウイークデイに駐車場に入ったらペンショナーらしき老夫婦が多いのに驚きました。近年、本当に老人の割合が増えている様子が目に見えて感じられるようになりました。そして、なんと乗っている車の小さい事、本当に皆さんここはイタリアかというくらいリッターカーに乗られています。ちょっと前までは年配の方々といえば決まったようにブルーバードとかコロナに乗られていたものですが時代は変わりました。

英国で最初に驚いたのはLクラスの車が道路をほとんど走っていなかった事だというお話は何度もしましたが、最近の日本もよく見るとけっこうそれに近いものがあります。Lクラス以上の1年未満の新車のいない事、それは神奈川の県央では本当に通勤の40分間にほとんど見かけないというところまで来ています。それに比べマーチ・ビッツ・フィットの新車の多い事、その内車はまたステータスシンボルとして復活するのではないかという気がします。

そして、もう一つのイタリア状態が原チャリの増加です。そう、イタリア人は粋でベスパに乗っていると若い頃は信じていたのですが、お金が無かったのですね。

現実に、もうすっかり階層社会は定着しつつあるようです。トヨタの広告をもじって『社会が変わる、クラスが変わる。』というエッセイを書いたのが4年くらい前になると思いますが、変化は思ったより早く起こったようです。

去年、退職して派遣社員として継続して働いている先輩が、新卒の半分以下の給料だよとぼやいていました。私はマンションの入居申込みに年収の欄が有るので色々な職業の人の収入を知っておりますが、実際に多くの派遣社員はワーキングクラスのグローバルスタンダードと私が昔言った200万円台にあります。日本企業は正社員の年功序列がすぐには解消できないので派遣社員を採用する事で賃金のグローバル水準化を進めています。定年して年金受給までの繋ぎの為に運良く会社に残れても既にこんなものだという事です。

2割の天国と8割の地獄、まあ印象づける為にこういう風に言っていますが、気持ちの良い生活水準が維持できるのは多くて2割が良いところでしょう。アメリカのようにスラムから出るにはスポーツ選手か芸能人になるしかないなんてところまではまさか行かないでしょうが、階層社会の再生産の危機を唱える人はそういうところに収斂すると言われています。

団塊の世代のいっせい定年のような事は誰も経験した事の無い事です。お父さんが無事戦場から復員してできた戦後の復興の象徴のような世代だったのにいまやすっかりお荷物の世代になってしまいました。日本経済という神輿を担いでいた人達が逆にどんどんぶら下り始めたらいったい神輿はどうなるのでしょうか、足腰の弱い次の世代がどこまで支えきれるのでしょうか。

新人に40年プロフェッショナルとして戦えるように戦闘力を付けなければ駄目だと言いながら、頭の別の部分は40年後の日本なんて存在感が有るのか?と醒めた問いかけをしていました。『葉山フォートリスシティ』という冗談を昔書きましたが、東京がその地位を北京に奪われた時、そもそも洗練された富裕層が日本に残っているのかどうか疑わしくなってきました。

とはいえ、遠い先の話はともかくまだ日本は経済大国である事は事実です。経済大国である内にがんがん稼ぐ事です。必要であれば資産は将来海外に移転する事も可能でしょう。しかし、そもそも移転する資産が無いことには始まりません。

先の事を考えると頭痛がしてくると多くの方が言われます。しかし、こんな理由で一番大事な事を考えないで良いのでしょうか。

たそがれ時こそ、ミネルバの梟(ふくろう)は獲物をもとめて飛び立つのです。丸々太った中古の投資マンションは夜陰に乗じて走り廻っています、これを食べないでいったい何を食べるというのでしょう。まあ、楽天フリマのジュエリーくらいならデザートに良いかもしれませんが。