マンション投資の鉄人

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第九の鉄人

狼少年に慣らされる大衆。:人生50年、下天の内に比べれば夢幻の如くなり。

神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)

GMの経営がおかしくなって、業界のアナリストがなぜ調子の良かった10年間に手を打たなかったのかというような発言をしていますが、愚かな話です。こういうのを後知恵と言うわけですが、なってみればなるほど過去にそういう兆候は有ったなあと思うでしょうが、こうなるとわかっていた訳ではありません。

今回の紅海のフェリーの沈没にしたところで、火が消せると船長以下幹部は思ったのでしょうが、結果は消化に使った水が船内に溜り沈没してしまいました。もし戻っていたら、沈むまで6時間かかったわけですから十分にサウジアラビアまで引き返せていたでしょう。

このように、だいたい多くの悲劇というのは最初は小さな綻びから始まります。この綻びを甘く見ている内に、手が付けられなくなって大惨事に至るのです。
じゃあなぜ人間は小さな綻びを甘く見るのでしょうか。そう、そこに問題が有る訳ですが、実はほとんどの場合小さな綻びは惨事に至る事無く解決されているのです。この成功体験がより安全な対策をとる事を阻害しているのです。

だいたい世の中こんな大惨事が来ると騒がれて、来たためしが有りません。関東地方の地震にしたところで、30年前、日本沈没という映画ができる程騒がれたわけですが来ていません。我々はすっかり狼少年に慣らされてしまっているのです。

常に最悪のケースまで考える人間、それはその人が特に優秀だからではありません。一度まさかそこまではならないだろうというほど酷い目に合った事が有るからです。物事というのは泣きっ面に蜂と言われるように悪い時には悪い事が重なりそれはそれは酷い辛酸を舐める事になります。そして、それはだいたい考えもしなかった所から崩壊が始まり後は呆然と見つめるだけになってしまうのです。
今回ライブドアの株をかなりの額保有されていた人は現在正にこの心境でしょう。数千万円が1ヶ月も経たない内に紙くず同然になったのです。しかし、これは1992年当時、そう稀な事ではありませんでした。確かダーウインも株価は7,600円くらいしていました、そして倒産で一夜にして紙くずになったのです。

おそらく、こういう悲惨な経験の無い若い人は私の色々な警告を読まれてもなんとなくリアリティが無く、自分には関係無いと思われるでしょう。しかし、人生というのは九死に一生という言葉が有るように何度か危ない目に合うものです。それがあまり語られないのは多くの方がもはや語る事ができないようになってしまうからです。
1992年以降、主人に内緒で株をやっていてバブル崩壊で自殺した奥さんの話など投資家の間では珍しくもなんともありませんでした。そしてまた悲劇は繰返されようとしています。
高額の自宅も同様です。東京地裁だけで毎年約1万件不動産競売にかけられていたのです。一度近所の地裁で不動産競売のファイルを見てみられる事です。そこには平凡な家庭の経済的な崩壊の記録が残されています。私は何百冊と見ましたが、奥さんと子供が残っている物件は入札できませんでした。それは小さな幸せを求めた平凡な人間にはおそらく受入れ難いだろうあまりにかわいそうな現実でした。
そして、なんとこの悲劇もまた繰返されようとしているのです、無知と欲望というのはなんと酷い結果を生むのだろうか、と思うのです。

人生50年、下天の内に比べれば夢幻の如くなり。舘ひろしさんの信長がとても似合っていてこの敦盛を思い出しました。本来の意味とは違うのですが最近自分の50年の過去が本当に夢幻の如く空ろになって来たと感じます。
現実にこうやって残された大きな可処分所得を構築した過去の自分に感謝しなければいけません。