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第九の鉄人
神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)
先日債務整理を専門にされている弁護士の方が、マイホームの事を悪魔の金融商品と呼ばれている記事を見てうまい表現だなあと感心しました。幸せなマイホームでの家族団欒で誘惑しておいて後はローン地獄、さすがに多くの例を見て来られた方の表現にはリアリティが有ります。
ちなみに、住宅ローン破綻予備軍は1000万世帯もいるそうで、これには私もちょっと驚きました。日本の世帯は4300万世帯で持ち家は半分くらいではなかったでしょうか。なんと2~3世帯に1世帯が破綻予備軍という事になります。まさにアンビリーバブルな事実です。
しかし、以前から言って来たように住宅取得減税の影響で本当に猫も杓子もマイホームを買いましたから、将来の収入が安定している公務員や大企業の従業員を除けば今後の経済状態によってはもっと危ないのかもしれません。
でも1998年にあんなに個人も破綻したのにあの時の教訓は全く生かされていないのです、本当に愚行を繰返す人間が多いのには呆れてしまいます。
12日グリーンスパンさんが世界的な資産価格の下落を警告されました。そして、翌日はバイズFRB理事が米国の不動産投機に警告を出されたのです。おそらく彼らは米国経済をソフトランディングさせようと口先介入をしているのでしょうが、欲望が渦巻く熱狂に対しては焼け石に水でしょう。
一度こういう状況に身を投じるとわかりますが、正気を維持する事は不可能です、出遅れまいという焦りが聞く耳を持たなくしてしまうのです。そして、ペンデュラムは振れ過ぎてオーバーシュートするのです。
米国の不動産バブルがバーストしたところで日本は関係無いと思われる方も多いでしょうが、問題はこれに起因した米国の需要の後退です。おそらく自動車産業をはじめとする輸出産業は大きな打撃を受けるでしょう。これは病み上がりの脆弱な日本経済にとっては致命的です。また、供給過剰の構造不況状態に戻り固定費が増加し契約社員は切られ、正社員の賃金は足踏みを始めます、ここで金利が上がれば家計は簡単に破綻というわけです。
そして、経済がおかしくなって来たら日本は絶対に産業・現役を優先させます。加工型産業国である日本において基盤である産業を優先しないという選択肢は無いのです。日本の年金生活者は必ず切り捨てられるでしょう。
私はマイホームの取得を否定するわけではありません、順番が違うと言っているのです。なぜ社会に出て10年で人生の果実を先取りしてしまうのか?という事です。若い内に力を蓄積しておかないでどうやって人生の後半を無事過ごせるのできるのでしょうか。私にはこういう人達は片道の燃料を積んで出航した大和のように思えてなりません。無事な帰還の確率はほとんど無いのです。
とにかく、最初のマイホームは貸した時それなりの収益が期待できる安い中古物件を買って、余力で収益を生むワンルームを淡々と買い増して行く事です。そして財力に十分な余裕が出たところで望むようなマイホームを買えば良いのです。
最近、周りの人達がガス欠でどんどん落伍して行くイメージが湧いて気持ちが晴れません、非常に厭な感じです。今度のインパクトは私が言って来たよりもっと酷い事になる予感がします。
少なくとも読者の皆さんには勝ち抜いてほしいと思います。嵐の後このエッセイのおかげで生き残れたという人の声が聞ければ、継ぐ者を育てるという私の一つの役割が果せた事になるのです。