マンション投資の鉄人

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第一の鉄人

50歳を越えたら資産を増やすことよりも リスクマネジメントに優先順位を

札幌市在住 M.S.

 山崎社長と知り合い「第一の鉄人」を書き始めた頃からもう30年近くが経過しました。この間もちろん色んなことがあり「人間万事塞翁が馬」を数多く経験し、正に「人生色々島倉千代子」でした。2年前から、ちょっと早めのリタイア生活に入り、東京を引き払い昨年、故郷札幌に戻ってきました。

 最近(これを書いているのは2月11日です) は、日本はもとより世界的に株式や通貨、債券、商品とくに原油市場が大荒れです。日本で株投資をやっている一般人は買い持ちばかりで、空売り、インデックス売りやプットオプション買いなどはしませんので、損失で青くなっている人も多いことだと思います。ちなみに私は10年前に相場モノから足を洗ったので、2008年のリーマンショックの時も2011年の大震災の時も、そして今も相場に関しては冷静に客観的に見ています。

 私は著名な投資家でもありませんし、投資指南書のベストセラー作家でもありません。今まで不動産投資、株、FX、商品先物、金の現物買い、金融商品購入など様々な投資や投機を身銭で実行し、時には儲けて有頂天になり、時にはある日突然財産を失い、滑ったり転んだりを繰り返してきたごく一般的なサラリーマンですが、机上の空論で身銭を切らない、切ったことのない評論家よりも現実的なお話しができると思っています。

 この3~4年、自分の周りの友人知人の話を聞いていて「なんだかまたバブル再来だね」と感じていました。例えば、私がアドバイザーをしていた20代の若いベンチャー起業家は、アベノミクスの成長戦略のひとつであるベンチャー育成のテーマを掲げる国の方針に上手く乗っかって、担ぎ上げられ神輿に乗り、甘くなった上場基準で株式上場。一夜にして自分の持ち株資産200億円でした。数年前に上場を果たした30代の知り合いは株バブルで新興市場から1部上場に鞍替えを機に後進に社長職をバトンタッチして自分の役職を外してシンガポールに移住し、上手いタイミングで自分の持ち株を売り抜け100億円ゲット。もちろんシンガポール移住は節税対策の為で日本には一切税金落としていません。また40代の不動産会社社長は、東京で不動産転がしで稼ぎまくり、タイミング良く株に稼ぎを投資して10倍以上に、そして節税対策だあと赤坂や虎ノ門のタワーマンションの上層階をポンポン買い占めたらそれがまた値上がりでワハハ状態。こういう例が私の周りで結構あるのです。
 一方、私自身はというと、大学卒業後、大企業に40歳まで勤めていましたが、転職し今まで3社の外資系日本法人社長をやってきました。数千万円の年収があり統計上はサラリーマンでは全体の0.01%の所得層に属していたようですが累進課税とナントカ税だので所得の半分以上を有無を言わさず国や自治体から剥ぎ取られてきました。これじゃ、まとまった財産なんてのこるわけありません。
追い討ちをかけるように退職して収入が0になっても2年間は健康保険は毎月約6万円、退職翌年の驚くような住民税、年金も60歳までは国民の義務だと追いかけてきます。

 愚痴ってしまいスミマセン。もちろん、お金のためだけに生きているわけでもありませんし、資産を多く蓄えた人が人生の成功者ではありませんが、言いたかったのは、日本では真面目にサラリーマンとしてやっていては、雇われサラリーマン社長まで上り詰めたところで、大して残らない仕組みになっているということです。これは、日本の名だたる大企業の雇われ社長でも同じです。
ちなみに、官僚の世界は、やはり上手くできています。若い頃から所得自体は低くてもある程度のポジションにつくと「天下り」があるわけです。「天下り」システムのすごいところは、見かけの年収は低いものの、退職金を大きく設定しているところです。日本の税制では、退職金の税率は低く抑えられています。よって、天下りを数回繰り返すことにより、どんどん太るわけです。さすがに、最近ではインターネットの普及により、色々な情報がすぐに駆け巡る状況ですので派手には官僚のみなさんもできませんが、インターネット普及以前の数十年の間は、やりたい放題だったのでしょう。
 やはり、日本のシステムは、創り手である官僚や政治家にメリットがあるようにできているわけです。

 横道にそれてしまいました。話をもとにもどします。前記の例に登場した彼らのすごいには、手仕舞いの上手さ。今まで散々お世話になったアベノミクスに対しても「お祭りはいつまでも続きませんから」と上手く株や不動産を売り抜けてマイナンバーがくる前に財産海外移転してシンガポール移住。動物的勘とその実行力はやはり素晴らしいものです。まあ、こういうハナシは世間では何処にでも転がっているハナシなので、だからどうしたと言われればそれまでなのですが、一緒に酒をのみながら彼らから「xxさん(私)は、やっぱりエリートだからスゴイですよね~」などともちあげられても、私もお金中心の人生観で生きてきたわけではないにせよナンダカナア~という感じなのです。

 私が彼らから学んだのは、ベンチャーや投資で成功するのはスキル・知識・情報よりも地頭(じあたま)の良さ・覚悟を決める意志力・リスクをとる実行力なんかだなということです。
 例えば、「誰にでもできる究極の投資術」「一日10分の株、FX必勝法」「1時間でわかる2016年の世界経済はこうなる」「資産ゼロから不動産で10億円」的な本を書いている人に本当にリアル資産のある人はいないでしょうし、それを読んでいる人で成功している人もいないのではないでしょうか。人は楽したいものです。だから「誰でも1日1分で幸せになれるxx法」とか「誰でも1日3分で1ヶ月で10キロダイエット術」みたいな本がいつも手を変え品を変えベストセラーになるのでしょう。

 また、話を戻します。前記の彼らは、物事を複雑に考えません、というより複雑に考える習慣をもちません。素直に世の中の流れ、一般民衆の思考と行動の方向にフォーカスしてます。現実とは乖離している経済理論、ベンチャー理論にも、世界経済情勢にも興味がありません。ドラッカーもダニエルピンクもトマピケティーも買っても読みません。どうせ理解できませんし、机上論で金儲けはできないことを動物的に察知していますから。それよりも、政治や政策がどっちに向いているか、一般民衆がどっちに走り出すか。
 例えば、安倍さんが2014年1月のダボス会議でアベノミクスの成長戦略の一環として「年金運用の株式運用比率を50%にすると発表」というようなニュースには敏感に反応します。少しでも相場をやったことがある人には「それってヤバくね」と思うのが正常ですがGPIF年金積立金管理運用独立法人にしてみれば、上司の言うことは例え間違っていても聞かなければなりませんから言われた通りに外部の証券会社に丸投げで買わせるわけです。上から下まで、どうせ自分の金じゃないしという感覚なのでしょうね。マスコミも今は政府から情報統制を受けてますからニュースにはできませんが、昨年2015年10月時点のネット上の情報によると、すでに10兆円の損失が確定しているとのこと。それから相場の乱高下のたびに買い支えているでしょうから、今回の暴落では多分相当な損失が出ているはずです。これでまた年金支給開始年齢が上がったり、負担額が増えたり、支給額が減ったりすることでしょう。

 さて、みなさんはいかがでしょうか?この文章をお読みいただいているみなさんの多くは、50歳以上で数戸の投資マンションをお持ちの人たちが多いと思います。当然、株や投資信託、FXや商品先物などをやっている人もいるでしょう。長年務めた退職金を老後のためにどうやって投資して増やしていこうかと悩んでいる人も多いことと思います。
 投資の指南書には、分散投資が鉄則、卵は一つのかごに盛るな、という原則が書いてあります。その言葉じたいは、間違ってはいないと思います。
 ところが多くの人は、この言葉によって以下のような自体に陥ってしまうようです。それでは分散投資しなければと、あれもこれもと銀行や証券会社の言う通りに分散投資してみた。株価が上がっているときは評価益が見かけ上でていて気分もよかった。ところが日本株も外国株も下がり始め、為替も乱高下しはじめると評価損がでてきた。不動産REITも買った時が天井だった。さらによくよく見てみると手数料が思いのほか多い。そしてこれ以上の損失を回避しようと損切りだあと解約しようとすると違約金がとんでもないことになるというような「鴨ネギ」状態になっていた。大企業のエリートで肩タタキされて退職金上乗せプログラムで大金をもった人に多い例ですが、このような事態に陥らないことが最も重要なことだと思うのです。若い頃のようにやり直しがきく年齢ではないわけですから、積極的にリスクをとって資産を増やすことを考えるよりも、リスクの本質を見極めて資産を守ることに優先順位をおいてはいかがでしょうか。

 私自身は、最盛期は区分所有マンションを約20戸所有していましたが、処分し続け今は売れ残りの3戸だけです。埼玉に長年所有していたスカイコートを昨年、良い値段でさばけた時には関東圏の物件所有がゼロとなりホッとしました。私には、関東地区で大地震が起こる確率が高いと科学データも裏付けている状況で、不動産が値上がりしている現状はどうしても理解できません。杭打ちが岩盤まで届いているかどうかとか、建物強度がどうだとかいうレベルのハナシではないと思うのです。あくまで確率の問題ですから、我々が生きている間には、なにも起こらないかもしれません。それは宝くじと同じです。東日本大震災や福島原発の爆発による放射能汚染のように今の時代は、なにが次の瞬間おきるかわかりません。その時、あわてふためかないようにリスクマネジメントをよく考えることが最も重要な事だと思います。私自身は、お金のリスクマネジメントだけでなく、自分の今後の人生のリスクマネジメントに関して最近はよく考えています。お金は人生の一部でしかありませんから。

 札幌の不動産投資のテーマからは、ずれてしまいましたが不動産投資もリスクマネジメント第一です。これから少子高齢化の時代、マンション投資をどういうシナリオで考えるのか。借り手が高齢化し、絶対数が少なくなることは事実でも、賃貸マンションが全てなくなるわけではありません。今よりも借り手側の選別が厳しくなってくるわけですから、その中でどう自分の所有物件の優位性を高めていくのか。札幌以外に在住の方は、管理の問題も大きくなってくるでしょう。
 自分でできないなら信頼できるパートナーにお願いしなければなりません。目先の投資利回りの数値に投資指標の優先順位をもってくるのか、それとも立地を優先するのかなど考えるべきことは沢山あります。巷の「誰でも成功する不動産投資法」的な本の内容を鵜呑みにせず、長年にわたり札幌で信頼を築いてきたアパマンさんにじっくりと相談してみてはいかがでしょうか。
 最後に、アパマンさんをもちあげたところで終わらせていただきます。