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マンションの健康診断


草野裕樹

 人間は定期的に自分の体に異常がないかどうかを診断する為に健康診断を病院などで行います。これにより早期にガン細胞が発見されたり、なんでもないような症状が実は大変な病気の前兆だったりと多くの情報が採取でき、今後の対応策を早期に打ったり、または手術で悪い部分を切除して改善へ向かわせることも出来ます。

 マンションはコンクリートや鉄骨、鉄筋など作られており、人間の寿命と同じくらい存続させることが可能です。しかしながら何もしなければ当然のごとく外壁は汚くなり、水漏れや雨漏りをするようになります。それを防ぐことを目的に人間の「健康診断」に代わる建物診断を行います。

 これは専門家の方がタイルの面を一枚一枚叩いて音を聞いて調べる打音検査や一部のコンクリートを抽出し内部の中性化具合などを調べる検査など多岐にわたります。ただし、このマンションの検査は非常に高額な検査費用がかかります。それゆえにマンションの診断はあまり行わず放って置くようなマンションも多く見られます。

 マンションはがっちりしていて中には鉄筋や鉄骨が入っているから簡単には壊れない・崩れないと言うのは神話に過ぎません。実際コンクリートは非常に繊細で風雨にさらされたりヒビ割れしたところから雨が内部に進行し鉄筋が錆びるなどして非常にもろくなってしまう。

 この現象は一般的にマンションの外壁などを目視で診断することも出来る。(すべてがわかるわけではないが)例えば、古いマンションなどで外壁にボコボコと膨らみがあってひび割れが出ていたりする。その周辺に赤錆などが見受けられることがある。これは躯体に入った小さなヒビなどから雨水などが浸入し鉄筋を酸化させ(錆)コンクリートを押し出してしまう現象である。こうなってしまうと元に戻すことは容易ではなく、その部分をはつって錆を落としまた封をするという工程が必要となる。費用も莫大で時間もかかる。また、デコボコしていないまでもヒビの表面付近が白くなっていることがある。これも同じようなもので雨水の浸入でコンクリートが中性化し石灰分が表面に出てきている証拠である。このようにちょっと気にすれば見付かるようなものもあるのである。

 コンクリートはただ単に粉になっていたものがまた硬くなるのではなく、コンクリートの元になる基材が木の枝のように触手を伸ばしそれが絡み付くことであの屈強な強さが生まれるのである。コンクリートは我々の近くにある非常に慣れ親しんだ建築素材であるがきちんと注意して手入れをしてあげないとすぐに中性化して非常にもろくなってしまうのである。

 もろくなったマンションには耐震偽造やアスベスト以上に怖い問題が内包してある可能性があるのである。