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草野 裕樹
最近木造住宅の増築に関して以前(耐震偽造事件以前)よりも審査が厳しく、受注が低迷しているという話を耳にした。耐震偽造事件以前は容易に国からの審査が下りてきていたが現在は非常に審査が厳しくなったのと審査に時間が多く費やされるようになったことで、受注する側、発注する側共にデメリットばかり目立つという。偽装事件前は逆に言うとザル法のようなもので、本当に耐震強度計算できる担当官が役所に一人も居なかったり、民間審査機関が審査を通してしまえばそれを鵜呑みにし、目を通すこともなく建築許可を出したりしていたという経緯がある。先日もテレビのレポート番組で放送されていたが、申請を出しても何ヶ月も許可が下りなかったり、木造のもので増築するものについて審査が下りなかったりという状況が続いているという。また、最近の状況として増築に時間がかかるなら逆に改築という選択肢を選ぶ消費者も多いという。その際もある程度の制限は加えられるものの、審査基準は増築よりは通りやすく時間もかからないそうだ。
この状況はいったい何が原因で起きているのだろうか?
原因として挙げられる大きな要因は一級建築士による耐震偽造マンション建築及び販売によることである。あるマンションは基準の30%の耐震強度しかなく震度五からの地震で倒壊するという脆さだという。この件に関しては関与した建築士、建築を指示した販売主、耐震強度の審査を行う検査機関全てがこうした状況を把握しつつ故意に建築・販売したとして民事・刑事共に提訴されている。こうしたことが明るみになり、一番肝を冷やしているのは地方自治体である。民間検査機関は地方自治体からの委任を受け、耐震強度などの審査を行ってきた。つまり、民間の審査機関が故意に行った偽造は地方自治体が行ったのと同じことになってしまうためである。その事が大きく露呈する前に規制を加え建築審査等に対して厳しい制限を加えたのが一連の流れの根底にある。また、今まで審査できる担当官が居なかったこともあり人員不足なのときちんと審査慣れしておらず大きく時間が割かれてしまうという実情が見え隠れしている。このような状況下において一番制限を受け、経済的ロスを被っているのが発注する側の人間、つまり消費者なのである。
こうした状況は今後緩やかに解消されてくるという説明が番組の中で話されていたが実際その時がいつ来るのかは見通しすらたってはいない。
先日の耐震強度が3割しかないマンションは現在使用することは出来ず、ローンを組んで購入した人は新たにマンションを購入し入居する場合は2重ローンの地獄が始まっている。買ったものが瑕疵ある物件だったとしても、善意の第3者機関である金融機関はローンの抹消や減額などというハッピーエンドな話は決してしない。あくまで支払わなければならないのである。
こうなってくると現在係争中である薬害訴訟などと同じ性質を持ち、国が責任追及されるのは必至であると介される。建物と人間は切ってもきれない関係にある。そうした普段の生活の中に潜む悪意を見逃さない検査機関とスピーディな対応が今非常に待たれているのではないだろうか。