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草野裕樹
現代日本において、少子化が実しやかに話されるようになったのはこの10年の間であろう。今から25年前にはベビーブームという今とは逆転した現象が起きており、日本の人口はそのままいけば安泰なものになっていたのかもしれない。今となっては年金問題、医療費問題、高齢化問題、過疎の問題など多くの問題が現代日本を象徴するキーワードとなっている。
こうした状況下、不況下に眠っていた資金が流動的に動きを見せ始めたこの数年で投資における不動産取引状況は一変した。まず、金融機関の低利回りに行き場を失っていた資金が、更なる可能性と利潤を求め不動産投資へと矛先を向けた。銀行などに預けていても利鞘を生まないが不動産投資は入居中であれば銀行の利子の遥か上を行く潤沢な利回りを生んでくれる。この状況下に日本各地に眠っていた資金は不動産へと向いたのである。また、不動産は株や証券と異なり決して紙くずになるようなことはなく、ある一定の評価の下で取引がなされる。この安心できると思われる投資方法に日本は沸いた。結果として人口の増加率が高い都市、人口が密集し今後の発展が見込める地域へのマンション供給が大金を持って投入されていくのである。
不動産・マンション投資は問題のない安心な投資のように思われているが本当にそう言い切れるのであろうか?実際に多くの資金が動いている世界において「今更」かもしれないが、曇りはないのだろうか。例えば、先述したとおり日本は少子化・高齢化に向けてまっしぐらに突き進んでいる。この状態の中、マンション投資や不動産投資がこの後成功を続けていく見通しは暗いのではないだろうか。高齢化が進めば人口の減少は避けられない。そこにおいての少子化であるからダブルパンチである。誰が考えてもマイナス要因しかない。その中での供給にあって需要が伸びていくことはまずありえない話であろう。その打開策があってやっていると投資なのだろうか?
不動産投資において大切なのは需要と供給のバランス、そして品質である。バランスが崩れてもいけないし、品質が悪いモノが出回っても投資は成功しない。また、不動産投資の世界において必須なのが「場所の利」であろう。この要因がなければどんないい物件も、どんなに素晴らしい建築家が作ったデザイナーズマンションだったとしても、近未来にスラム化が始まり、管理のし難さと維持管理コストの増大で持ち堪えるのが至難の業になってくるであろう。現在の大型マンション投資は本当の中心部に大きな一棟物でマンションを建築しているがそれはあくまで一過性に過ぎない。現在のラッシュが過ぎれば他に出回っているものと変わらなくなる。現在新築で、綺麗で、地下鉄すぐそばの「いいマンション」が、年数が経って既存の物件の仲間入りをすれば郊外型で建てられたマンションなどは太刀打ちする術を失う。それどころか現在市場に出回っている中古1棟物や木造アパート場所に分が悪いものがほとんどで、滅多に掘り出し物になど出会うことはない。市場に出るには何らかのリスクがあり、現所有者がそれを嫌悪して売りたがっている場合があるということも計算しなければならないのである。全てがうまくいくとは限らない投資の世界であるが、先を読み、場所の利さえ把握できればある程度の成功が手に入るのは間違いない。そのためには正しい情報と正しい業者に出会うことが根底にある必須事項であろう。一度だけの取引ではなく、数度取引を重ねても信頼出来得るパートナーを探すことがまずは先決なのかもしれない。目先にある甘そうな利益より、確実で信頼の置ける投資を今後はしていく必要があるのではないだろうか。人口の減少に歯止めが利かない現状における不動産投資のあり方は、需要供給のバランスと場所の利を見出せるか否かに懸かっているといえよう。