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草野 裕樹
この時期は毎年ながら賃貸は苦戦を強いられる。他の業者さんが鍵を借りに来る際に近況や賃貸の動向などを聞くことにしているが、最近はなかなかいい話が出てこない。
札幌は人口が約190万人いる大きな都市である。この人口の中で、潜在的な賃貸の需要というのはどの程度あるものであろうか?不動産は借りるだけではなく、売買や交換がある。この中で、どのように動き、どのように示していくのかを今回は取り上げたいと思う。
札幌は先述したとおり、約190万人の人口を有し流動的に動いている賃貸や売買の需要は計り知れない。これが年初めから続くような繁忙期であれば、その需要は物件の活発な動きに刺激されて表面化し目に見えて取引の推移を計ることが出来る。よく「札幌は冬場は賃貸は動きにくい」などのご指摘をいただくが、これは全くの誤解で、日本全国同じように年度末や春先の異動時期は大きな需要があるのである。それは売買も賃貸も両方で伸びていき、繁忙期の衰えと共に減少傾向を示していく。今の時期はこの減少期の真っ只中にあり、目に見えて賃貸が動いたり、多くの売買物件が取引されたりということはあまり多くない。しかし、この緩い閑散期であったとしても需要は必然的に内在しており、流動的な需要は様子を伺っているように思う。実際物件が全く止まってしまうということもないし、「退去する」という行為があるのであれば、どこかに「入居する」という行為があるということなのである。
ではどんな需要が閑散期には内在しているのだろうか?
元々「部屋を探す」という行為は、今自分の置かれた住環境が合わなくなったために他にある「自分に合った」生活を探す行為なのである。いわば海にいるヤドカリと一緒で条件が合わなくなれば、条件の合う「宿」探しを行なう行為だといえよう。自分の置かれた状況に不満を持ち、物件を探すのは当然の願望として現れるが、その中でも少しでも優位な条件の中で最良のものを探し出そうという本能が人間にはある。駅にしても10分よりは5分、5分よりは3分など、好条件を上げたらきりは無い。しかし、繁忙期と異なり、閑散期は好条件のものが多く、それを選ぶだけの時間も充分ある。そのため、物件を探すことに充分な時間が割け、かつ、より好条件のものが出るのを待つことも可能なのである。
また、札幌にはもう一つ借りる側には好条件があり、安くて良い物件が豊富にあるということである。駅に近いのは当然ながら、建物も厳冬期を意識して建築されているため、風害や凍害によるダメージを受けにくい。これにより長く綺麗で清潔な住環境を享受しやすくなっているのだと思う。
最近リートで多くの新築物件が建ったが、これが物件余りの原因といわれているが、これは一過性のものだと思う。「新築」「築浅」というある意味プレミアムが剥れたとき、一般物件としてどれだけの対抗要因があるかが問われるが、好条件のところには既存物件があるために、場所の利では対抗は難しい。そうしてくると管理や設備になるが、それをどのようにマネージメントして賃貸を付けていくかが、今後の大きな課題として残っていくと思われる。