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草野 裕樹
札幌は現在約190万人の人口を抱える非常に大きな政令指定都市であり、北海道は勿論、東北以北で一番大きな都市となっている。人口についても現在年に1万人程度ずつ純増傾向にあり、周辺都市からの流入も増加の一途を辿っている。
さて、最近この大きな都市における不動産動向が大きく変わろうとしている傾向が見受けられる。人口が増えているので、マンション等住宅物件の供給も増加しており、現在にいたっては需要より供給のほうが多くなってしまったほどである。この状況下において変化が出始めている。
まず、最近増えてきたリートによる新築賃貸投資物件。これらの物件はその名の通り不動産投資を主眼として投じられた資金を基に供給されている。「新築」というプレミア感は他の既存物件にはない優越感だが、その「優越」という言葉自体が揺らいでいるように思う。札幌には北海道大学をはじめ大小多くの学校が存在する。これらに通学する学生は少なからず親元から離れ一人暮らしをすることが予想される。これらの賃貸需要を見込んで大学周辺や人通りの多い場所に多くの物件が供給され、その流れは今も止まらない。そのため札幌駅北口周辺や西18丁目付近には多くの新しい物件が供給されている。しかし、その多くは入居者不足に頭を抱えているのが実情である。これが、まず第一の揺らぎと言える。この状況は近年、特に昨年の冬から顕著になってきていると思われる。学生が動き出すのは推薦入試の合格発表前後からであるが、新築物件があってもなかなか決まらない。設備や外観などの見た目は圧倒的に勝っているのに、思うように賃貸の流れが届かない。これはなぜであろうか?「金額が高い」という意見がまず最初に出るであろう。もちろん、その通りで築年数や設備などがそんなに変わらない物件であるのに、賃料だけは大幅に違ったら借り手はどう思うだろうか?実際家賃を払う側はどう思うだろうか?プレミア感のみの満腹さはいつまで続くだろうか?まずここに原因は存在する。貸す側の期待感と借り手側の現実的視点には大きな誤差が生じているといえるだろう。
また、第二に、北海道経済の状況である。「バブル」といわれる素敵な時代が幕を下ろして長い時が過ぎ、今度は長く冷たい低調な経済が続いたが、未だに北海道経済はその長い不況下におかれている。首都近辺や三大都市圏では回復とある程度の伸びを見せたがその余波が北海道に届くことはなかった。その状況下においては、経済は停滞しているため労働者所得水準は決して良好な状態とはいえない。その所得の中で学費と賃料、生活費を拈出するとなると並大抵の苦労ではない。その状況下で「新築」という優越感を手に入れようとすることは、他の家族の生活を苦しめる要因になりかねない。これが、単身社会人やファミリーの集まる場所や好まれる状況下であれば話は全く変わってくる。つまり、貸す側の見通し(所得=支払える金額)と借りる側の現状(実際に支払うことが出来る金額)にも大きな誤差が生じているのだといえる。
この二つの誤差が生じ、対学生用新築賃貸の需要に足枷になっているのである。逆に好調なのがある程度のグレードと管理の良さが見えるマンションなどである。実際入居率や入居期間を見ても新しいものを越えているものが多くある。特に既存物件はより駅から近い場所や、よりスーパーなど利便性の高い場所に造られているため、それらの優位点を物件の魅力として広告することが可能なのである。
現在札幌市内において物件はおおくある。投資する中で、何が大切で、何をマーケティングし、借り手側の需要は何に向かって進んでいるのかを把握しないと、いくら新しいマンションでも「良い物件」とはなりえないのである。