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夏の空室対策と新築


草野裕樹

夏は一般的に不動産関連、敷いては賃貸に関しては苦戦するといわれている。夏の暑さを避けて探す方もいるし、専門学校などは夏の体験入学などがあるためそれを終えて探す方なども多い。一方、不動産業者も黙って指をくわえているのではなく、チラシをまいたりネット広告を駆使したり様々な広告媒体を利用して集客に努めているが期待するほどの効果は望めない。では、今の需要は何にあって、どのようなものが「需要」として現れるのか?
最近の投資ブームに乗って大手各社や、地場不動産業者によって多くの投資向け物件が供給されている。この内容については鉄筋系も木造系も増加してきており、各々場所に応じた戦略を持って入居者を探している。以前であれば「新築物件」と言えば絶対数も少なくある種のプレミアみたいなものがあった。しかし現在では新築は既存物件より溢れておりプレミア的な要因は欠片も見受けられない。というのは、以前の新築物件は供給数≦需要数であったため、入居するための審査も厳しく所得制限や職務内容などにより入居者層が一定以上のステイタスをもった希望者が選別されることが多かった。しかし、供給数≧需要数となった今となってはそんなことも言っていられずに「とりあえず」で入居希望者を選別し入居させてしまうことも少なくない。よって、家賃の滞納・遅延や、共有部の占拠、ゴミのマナーなどスラム化へ向かって舵を取ってしまうことも珍しくはない。よって貸す側にとっては「新築だから」という需要は大きく期待できないし、リスクも内包するため慎重にならざるを得ない。かといって慎重になれば審査も厳しくなり、そこである程度のロスが発生してしまう。現在はこの状況で足踏みしている状況であると見ることができ、空きが大量に出ているのはその迷走する舵取りからといえよう。
では既存物件にあってはどうなのだろうか?実際、新築物件と既存物件を比較した場合、入居率において場所や設備が同条件であれば大きな差になることはない。ここでまず需要が二手に別れるためである。需要の分かれ目としては、新築が良いのか、またはそれに拘らず家賃や設備、場所を重視して選択していくかに委ねられるのである。比較検討した際に借りる側にとってどのようなメリットがあるかというシンプルな需要によって決まっていくのである。また、既存物件であれば新築物件と対抗するために様々な対抗策をとり限りある需要を得ようと努力している面もある。外壁などの修繕は勿論、室内の大規模リフォーム、家具家電などの付帯設備のセッティングなど対抗策は幾種もある。例えば家具家電などのセッティングにおいては、家具家電を揃える手間や退去の際の処分費・手間が省けるため学生や法人に需要があるとともに、短期間の需要である「マンスリー契約」など細かな契約体系なども拾っていくことが可能となる。通常契約を「1」として考えるとそれを「0.9」「0.5」など契約内容を細かくすることで今までなかった体系の需要を巻き込むことができるのである。つまりそれは新築物件には出来ない契約体系であり、いわば「オリジナリティをもった契約」ということが可能なのである。人間が人と同じことをすれば目立たないようなのと一緒で、不動産も九牛の一毛では存続することは難しいのである。
今、求められている需要はオリジナリティであり、他にはないメリット安心で、リーズナブルに、コンビニエンスストア的に供給してくれる、細かいサービスなのではないだろうか?