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草野裕樹
最近めっきり秋らしくなり、冬の息吹が少しずつ聞こえてくるようになった。夏はゆっくりと、そして低調な動きを見せていた不動産市場だがこの頃になりようやく動きを見せ始めている。賃貸のほうの退去もあるがそれと同等かそれ以上の動きを見せだした流れは春先繁忙期へと続き、その年の不動産動向へ大きく影響を与える。そして、賃貸が決まり始めると、安い投資物件などの売却や購入という動きへ刺激を与え、こちらも同時にゆっくりと動き始めるのである。つまり、賃貸の需要と売買の売れ行きには少なからず関連性があるのである。
このことは、札幌市内における賃貸動向と売買動向の動きを例に実証していきたいと思う。
まず、札幌市内において賃貸の強い場所というのは、北海道大学や藤女子大学のある札幌駅北口から地下鉄「北18条」駅周辺までの地域、札幌医科大や多くの専門学校を抱える「西11丁目」駅から「西18丁目・円山公園」駅エリアなど何点かの場所に限られてくる。この場所にあって春先などは必然的に新入学生などの新規需要があり、かつ、市内中心部へのアクセスも容易なため新入社員、各種法人契約などの需要が見えてくる。
次に、売買における需要だが、こちらは大きさや箱によるが今回は投資物件というカテゴリーでの話にしたいと思う。まず、売買を行う際に購入者は「投資」という観点から見た際に、間違っても「郊外で人通りが少なく雰囲気の暗い場所」などという需要は見出されない。普通の観点からいけば「学生街や繁華街が近く、交通手段に恵まれており、新し目の物件」など希望を挙げればキリがないが、いわゆる「決まりやすい場所」を望むであろう。株でも先物でのそうだが先行き不安がある商品について買う人などおらず、普通は必然的に「利潤」を生んでくれる商品に対して資金を投ずるものである。
以上のことは賃貸・売買の条件や希望を入れ替えても同じことが言えるのである。都合のいい物件に対して需要が集まり、市場原理により賃料・売買価格が上昇していくのである。
このことは逆の立場からも立証していくことが可能である。
例えば、賃貸の需要が弱い場所にあってしばらく空いているような物件については、賃料も下げざるを得ないし、売却値にしても高い数字はつかない。たとえ賃貸がついても、空室になるリスクとその期間が長いリスクが混在するため価格は上昇することはなく、利回りのみが異様に高い歪な形になってしまう。そうなると不安感などが先行し売買として取引がうまくいかないことも少なくない。
実際問題として需要=供給というバランスが一番望ましいが、原理からすると、強制力が働かない限りは有り得ない環境といえよう。よって賃貸の需要と売買の需要は、少なくとも一般水準から測って受益がどの程度あるかによって差異を表すものといえる。そしてそのことが賃料や売買価格に反映し需要にも影響を与えるのである。
このことより賃貸と売買の需要的位置付けの一致をみることが可能であるといえるのではないだろうか?