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草野 裕樹
昨年から始まった金融不安は不動産市場を直撃し、大きな不調和音を奏で続けている。現に、大手不動産ディベロッパー、大手不動産業者などが会社更生法を申請し再生の道を歩もうとしている。他の産業界を見ても明るいニュースは乏しく、不況風が席巻しているのが現状であろう。
しかし、すべての事象に対して不況だとか厳しいというのは大きな間違いである。あらゆる状況下において、需要というのは潜在しそれを如何に掘り起こし活用するかが、不況下における打開策への近道なのである。実際、不動産業界で見てみてみるとマンションや家屋が全く売れないでいるわけではない。逆に、この状況だからこそ販売が伸びているものすらあると思う。価格と需要には密接な関係があり、需要と供給のバランスによって形作られている。供給数が多い市場においては、需要を取り込むための価格下落が模索されバランスが取れたところにおいて契約(売買)が成立し在庫が消却されていく。一方、在庫を売却した収益は次の消費財購入に充てられ、そこでも価格のバランス調整が図られた上で商品が回転を始める。それが何回か繰り返されることで復調の兆しも見えてくるのではないだろうか。
では、価格下落が必ず復調の兆しを呼び込むのだろうか?
検証として、あるマンションディベロッパーの話をしてみたいと思う。この会社はある地方都市においてある程度のマンション供給を行い、知名度も社会人であれば一度は聞いたことのあるようなものだったとしよう。景気好調だった時に売却予想を基に、多くの在庫をストックし販売を行った。販売状況は予想に反し景気後退により、販売環境が厳しく思うように販売が伸び悩むと想定した場合、前記のように販売価格を下げ最低利潤において販売を行い在庫処理を行おうとするだろう。この状況下にいて、前提とされる景気回復がなされず、景気後退がさらに進んだ場合、最低利潤を割り込んで商品投入を続けた状況下においては「負の財産」のみが構築される状況が出来上がる。金銭債権を取得しても原価を割っているため、販売数=負の財産の増加という構図が出来上がる。この状況が深刻化していく現在のような破綻社会に陥ってしまうのである。
経済とは予測の世界であるというある恩師がいたが、まさにその通りで景気好調ムードが長く続くとは限らず、予測を一歩踏み外せばそこは奈落が大きな口を開けて待っている闇の世界なのである。
逆をいえば、反対の予測をしていけば、今まで買えなかった高価な物が購入できたり、マンション・一戸建てを格安で購入出来たりという状況も作られていくのである。景気とは見方によって大きく状況が異なる。売買(経済)の基本はモノが安い時にストックし、値上がりしたら在庫を処分するというものである。今、価格が下がっている状況下にあるのであれば、今こそ物件購入の大きなチャンスなのではないだろうかと思う。