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夏のマンション市場


草野 裕樹

 賃貸の需要において「夏」は不作の時期であり、なかなか賃貸や売買も決まりにくいが、その「いつもの動き」に変化が見受けられるようになってきたと思う。

 通常であれば部屋を探すにしても、マンションの一室を買うにしても需要期というものがありそれから外れるとなかなか決まらない・即決しないという状況がある。しかし、先月、先々月の動向と昨年同期の動きを比較すると件数自体は伸びていることが分かる。

 ではなぜその状況が構築されているのか?その背景には経済状況の落ち込みと消費動向の変動があると考えられる。市場規模が不況によって縮小し、それに連動して家計における対不動産支出も厳しく見直され縮小傾向にある。家計の消費における対不動産支出は非常に大きなものであり、逆にそれを縮小することで切り詰めた部分を他の消費や貯蓄に回すことが可能になる。その実行として転居が出てくるのではないだろうか。例えば、同程度、同等施設の賃貸物件がAとBがあって、Aの賃料は50,000円、Bの賃料が45,000円だった場合、比較検討する場合ほぼ同条件において高いほうを選択することは、まずない。この状況が一件だけにとどまらず大連鎖を引き起こしているのが今の不動産動向だと思う。また、当社の賃貸需要として多いのが家具家電を付けて、すぐに生活が始められるような内容の物件の人気が高く、契約も比較的決まりやすい。また、入居期間を見ても通常のフラットタイプよりも家具家電がセッティングされているほうが、入居自体が安定し、貸す側としても募集する経費が軽減できるメリットもある。また、平成初期位までの建物には室内洗濯機置場が設置されていない物件も多数見受けられるが、設置する・しないでは成約率に大きく差が出る。大家さんの中にはコインランドリーでの対応で充分ではないかと考えられる方もいらっしゃるが、それは大きな間違いである。例えば同じ物件内に洗濯機置場が室内にある部屋、いない部屋があった場合どちらが成約率が高いかというと、言うまでもなく付いているほうが決まりやすく、賃貸も安定する。また、借りている側も不便さを感じれば最初は我慢していても徐々に不満がたまり遂には他の好条件のものが出ればそちらへすぐに移ってしまうという行動に出る。

 不動産の価格(対価)はその時の経済状態を示す指標であり、必ず家計と結びつく。貸す側・売る側が妥当だと思っていても借りる側・買う側から比較検討する材料とともに見れば前者が思うほどの魅力は感じていないのが現実である。先月決まった賃貸も売買も価格的には割安感のあるもの、便利なもの、そしてその二つを兼ね備えているものといった具合である。経済の閉塞期であるからこそ、再度価格等を見直し、成立する値段に設定していけば賃貸も売買も関係なく契約につながるということを認識した。今後の経済状態の流れは見えないが、「人が借りたくなるようなもの」「買いたくなるようなもの」を逆に提案することで少なからず契約になり流動を作ることができたと思う。