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草野 裕樹
札幌における賃貸と売買における需要の厳しさが弱まってきたような気がする。夏場は元々不動産の動きは鈍いものだが昨年のリーマンショック以来その厳しさは日を増すごとに強めていた。賃貸の動きは貸す側の収益及び借りる側の予算共々下落傾向にあり、移動の傾向自体が外縁部から中心部への動きに拍車をかけるような気配をみせていた。売買においても価格の下落が始まりごく最近まで下がる気配が止まらず、バブル期とは逆の動きをしていたかのような気がする。
賃貸においては、「家計における収入の割合において25%」までというのが家賃限度額の大凡の目安だが、不況の中での収益減で今まで維持できていた家賃等も見直さなくてはならず、それによる移転など見受けられ、以前と比較すると珍しいものではなくなった。また、その際に見受けられる傾向が、現状の入居しているマンション・アパートのグレード、セキュリティは落とさず、家賃だけを落とすという借り方の手法が多く見受けられた。それは市場に出ている不動産賃料価格の純粋な下落を意味し、その類において需要が集中していることが見て取れた。
売買においても価格が下がってきているので今まで手の届きにくかったグレードの物が手に入る価格になったり、同じ金額で比較すると数か月前に購入したものよりハイグレードなもの、もしくは、より交通利便性や生活利便性の高い物件に振替えができるほどの差異が生じた。逆に売却する側にとっては過酷な値下げ攻勢を行う必要が出たため売買をストップしたり、延期したケースも少なくない。また、現状にて売らなくてはならない事由があった場合は買い手市場なため大きな値交渉を受けるケースなども見受けられた。
しかし、最近になりその傾向も沈静化し、特に売買においては価格の下落感がようやく少し落ち着きを見せ始めたような感じを受ける。その理由としては、「不動産」というものに対する最低対価があること、そして一番の理由は価格が下がったため購入意欲が増進され、その結果取引に至るまでの間で競争市場の原理の修正が図られる傾向が出てきたためであると思われる。競争市場の機能が回復することで価格の下落に楔が打たれ、それにより現状もしくは小さな上昇傾向の機運が高まったためではないかと見受けられる。低価格かつ需要の高い物件については物件数も限られており、それを一過性の価格下落が過ぎ去れば、徐々に以前の流れに辿り着くものと考えられる。
札幌においての不景気の波は依然大荒れの状態だが、その傾向は沈静化に向かっているような感じがするが、今後の動向については不透明な部分も多い。しかし、年明けから始まる賃貸の繁忙期を迎えるにあたって需要と供給のバランス、価格の落ち着きどころは徐々に回復傾向、そしてその期待が高まってきていると思う。価格の大きな上方修正は起きないと思うが需要の高まりが発生する可能性があるため、その動向を注視していきたいと思う。