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草野 裕樹
最近になり専門学校生など来春の移動に関する問い合わせが来始めた。まだまだ動き自体は弱いものの、今から押さえることが可能かどうかという問い合わせが保護者の方から寄せられてくる。専門学校の志願書受け付けは10月に多いらしく、夏休みにある体験入学を経験した学生たちがネットや学校からもらった資料をもとに物件を下見して歩いて、良いものがあれば4月家賃発生で予約を入れてくる案件がある。私は現に1件、その内容の予約を受け入れており、管理会社のほうも快く承諾してくれた。その代わり、部屋の号数が指定できないこと、参考の部屋しか内覧が出来ず若干の差異が生じることがあることを条件として飲まなくてはならない。管理会社にとって今から専門学校生を受け入れることは決してデメリットではなく、来春の申し込みをいわば「青田刈り」するような形での申し込みになるため、先に空いた部屋には通常のお申し込みをさせ、入居者から出る退去予告に合わせて申し込みをパズルのように当てはめて契約を進めていくという感覚なのである。実際この契約体系には二つのメリットがあり、借りる側と貸す側が相互享受の関係にあると言える。まず、借りる側は部屋指定こそは出来ないが、ある程度希望する内容と賃貸条件の物件が何も費用が発生することなく予約することが出来る。このことは家計にとって非常に優しく、不要な出費を最低限に軽減することが可能である。一方、貸す側にとっては通常の一般募集を同時に進めながら、時期の遅い予約を確保することで、空室のリスクを軽減しつつ、順当に貸室(空室)を減らすことに成功しているのである。春先の退去する案件を予約によって潰していき、かつ、新規の契約を得ることで、そこから新しい収入を得る新しい方法が出てきている。
春先の退去リスクと新入学シーズンの動向を先読みする新しい契約体系だとは思うが、規模の小さなマンションや区分所有物件には向かない手法である。退去の予告が出るのは基本的に一カ月前でありその動向が長期的展望に見合わないことや、例え予約を受けたとしてもその後部屋を確保するための空室期間によって、その空白期間は収入は得られず、かつ、必要経費はかかってくるので買主のほうの負担は空室の時からみると変わりはしないが、借り手:貸し手のバランスを見ると決して均等とは言えない状況下に陥るのは明白である。
物件が昔ほど少なくなく、借り手側の力が強まってきている中で何も手立てを打たなければ春先のシーズンすら申し込みがあるか不明なままである。
「いままで」という過去は良かったが、契約体系や提供できるサービスについては「これから」という未来を見据えなければ今後の賃貸の発展は無いと思われる。希少価値のあるもの、サービス、オリジナリティあふれるアイディアが求められる時代になったのかもしれない。