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3月レポート (2011/04)


草野 裕樹

 今年も新年度が始まり、新しい生活、新しい環境がスタートした人たちも大勢いる事だろう。期待と不安を胸に社会に足を踏み出した若かりし日の自分を思い出す。社会の右も左もわからずどうしていいかわからないまま今まで来ているような気もする。そんな自分が社会に出る際にまずやったことが部屋探しからであった。部屋を探すのも大学入学以来でこれも右も左も分らなかったような気がする。浴トイレが別のほうが良いのか、建物の構造はどうだ、場所はどこが良いかなど全く知らないまま札幌に来たのが事実である。失敗もしたがいい経験になったのは確かである。特に不動産業界に勤める上で、貸す側の視点、借りる側の視点が同時に見る事が出来るようになったのが一番大きな収穫だったと今では思える。

 さて、今年も繁忙期という大きな流れを乗り切ったわけだが、未曾有の巨大震災を被った影響はとても大きかった。大学に行くはずだった人が行けなくなったり、東北へ転勤するはずだった人が違うところへ行くことになったり、はたまた逆に東北各県から北海道へ来るはずだった事案なども無くなったりした。また、福島県から来た避難者などを中心に一カ月程度借りられないかという問い合わせなども多く寄せられた。何もない3月であればこのようなごく短期の問い合わせは少ないが、今年は振り返ってみると特異なシーズンだったことが分かる。

 しかし個人的には問い合わせ、申込数は変わらず、むしろ増加傾向にあった。この背景はどのようなものなのか?まず大学生などの学生関係申し込み自体の数を数えてみると、この週の申込数は例年の約半分程度まで少なくなっている。この点は他の業者さんの話などを聞いても厳しかったという話を結構な数聞くので同程度の割合で減少傾向にあったのかと思われる。今年の傾向として引っ越しを極力減らし移動を減らしたことが挙げられるのではないだろうか。経済背景もさることながら震災の影響でさらに景気が後退する先行き不安感から少しでも抑えられるところは押さえてきているという印象が強かった。一方、社会人を含め法人における移動の割合が飛躍的に増加した傾向にあった。これは法人の経費見直しなどで必要な期間に必要な人材を送り込むといった戦略があったのではないかと予想する。今までは余剰人員を含めある程度の人員などを各支店に配置してきたのだろうが、その部分の見直しをする事で人件費及び社宅費用を他の費用にあてがうことを目指したと考えられる。実際お申し込みを頂いた法人さんからもそのような話は伺っている。

 さらに今年多かったのが3月末退去の予定だったものが退去することが出来ず退去時期を延ばしたり、取り止めたりするという案件である。これは主に震災の影響であるが、東北から北関東方面への引っ越しを考えていた方に多くみられた。

 三月という異動シーズンは終わりを告げたが、実際の動きが止まっていないというのが今年の特徴ではないだろうか。短期の契約を含め今後もしばらくは動向を注視していく必要があると思われる。