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営業部 草野 裕樹
例年通り、3月末をもって、いわゆる繁忙期というものが今年も終わった。繁忙期というのは通常であれば2月~4月に一気に引っ越しシーズンを迎えるものだが、その動きは年々変化しつつある。今年もそれは少し変化し、いつもとは異なった表情を見せていたと思う。
まず、今年一番に強い動きを見せていたのが「割安感」のある物件である。成約した物件を見かえしてみると、不安定な経済のせいか家賃の希望上限に余力を残した感のある内容となっている。また、希望する条件(設備、場所など)と家賃との隔たりがあり、その隔たりについてどちらを優先するか検討してみると、やはり賃料を優先することが多かった。もしくは比較対象の物件の中で、再度検討し、希望内容を絞ってそれに該当する割安な物件に鞍替えするという事もあった。よって今年の需要形態としては「自分の希望≦家賃」という具合だったのではないだろうか。
一方で便利さを追求した物件の需要も高かった。特に強い需要を示したのが家具家電付きマンションであり、身軽に短期間で入居の準備が整うのが魅力であったのだと思われる。また家具家電があらかじめ設置されている事によって新たに家具家電を購入する費用を省く事が出来、先述の割安感のある物件とも相まって強い需要を示したのだと考えられる。法人契約などでは、今まではマンスリー専門の不動産業者に頼んでいた案件について、経費節約及び時間短縮のため交通の便が良い物件に見直しを図り、複数件の契約を一気にお申し込み頂いたりという動きも何件か見受けられた。新しい=優れているという神話が崩れ去った一面かもしれない。
ではどのような物件が不人気であったのか?
浴トイレ別であっても、オートロックであっても、外観タイル張りであっても決まらない物件などもある。それはなぜであろうか?物件を見る限りでは問題があるようなものではなくても、隠れた問題があることが多い。それは、貸主であるオーナーが現場の相場観を読み間違えてしまうことである。便利で、設備も充実し、マンションとしてのスタイルなども美観であれば通常は早く成約していく。しかし、現場の相場観と貸す側の相場観に大きな差があり、周辺の状況との家賃格差が広がると、設備や機能面でいくら優れていても借りたいという希望者は現れなくなる。それどころか内覧希望者すら現れなくなることすらある。貸す側はもちろん少しでも高く貸したい。これは誰もが同じように考えることであり、至って普通のお話である。一方借りる側にとっては少しでも安く借りたいというのが真理として働く。これも至って普通の考え方であり、どこにも矛盾点は無い。ここで考えておかなければならないのが、需要と供給のバランスであり、どちらが優位で、どちらが不利なのかということである。言葉を変えると、「代替物」はどちらが多いのかという事に表現することが出来る。この見方を誤ってしまった場合、貸すことも売ることも難しい結果として跳ね返ってくる。
今はインターネットなどでいろいろな情報を手軽に入手できるが、現場で無ければ得られない情報なども未だに多数あるのも現実である。何が需要としてあり、何が軽視されているのか、的確な情報が大切なのである。先述の通りインターネットや携帯サイトから借り手・買い手も同じように情報は得られ、かつ、現地にて得られる情報をもっている場合が多い。この状況から、借りる側、買う側のほうがより多くの情報をもっている場合、適当である数字として受け取られなければ需要は必然的に逃げてしまう事に繋がる。
情報は誰でも簡単に得られるようになった。しかし得にくい情報も少なくない。そこを埋めるのが我々の仕事であり、役目である。情報入手経路が発達すればするほどコミュニケーションは少なくなり、一方的な情報に惑わされることもある。今後の不動産取引においては、今まで以上の緊密さと豊富な情報量が求められてくるのだと思う。