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草野裕樹
5月を振り返ると、春先の繁忙期の慌ただしさは無く、緩やかな来店・成約傾向にあったと思う。例年これからの時期は緩やかな動向を示し、賃貸売買共に「決まる物件」、「決まらない物件」がハッキリしてくる時期でもある。4月~5月という時期は繁忙期の合間に行う退去の立ち会いが完了し、リフォームが終わった物が一斉に賃貸や売買の商材として市場に出る時期である。内装を行う内容にもよるが、物件の場所・形状・施設・設備で大体の動きは見えてくる。特に重要なのが場所で、必ず条件や希望の伺いを立てると大抵のケースでは優先順位の高いほうに来る。仕事場が近かったり、通学先周辺であったり、買い物が便利であったりと様々ではあるが、何をするにもどこへ行くにも場所は重要であり、場所選びでそのあとの人生が変わっていくと言っても過言ではないと思う。条件は様々であるが、ではどのようにして優先順位は付けられていくのだろうか。
お客様が電話やメール、直接来店されて接客する際に必ず開口一番に伺う事だが、条件というもの・優先順位は人それぞれ、さまざま異なる。先述の通り、時期によっては学校の近くだったり、職場から近かったりとこれからの生活に合わせて物件を選んでいくケースもある。しかし、繁忙期の終わった今となってはもっと多くの需要が見えてくる。どこの都市でもいえる事だが中心部は価格が高く、外縁部や近郊になればなるほど価格は廉価になってくるため、各家計における経済状態に合わせて引っ越しをしたり、他の都市から職を求めて安めの物件に入る傾向が頻繁に見受けられる。また、経済状態の不安定さからか車を維持することが出来なかったり支出を抑えるために便利さを優先して外縁部から中心部への流動も見えている。需要と優先順位には経済状態との密な関連性があり、景気の動向によって供給側の体制も変動してくると思われる。したがって今の需要が、数年後の供給に合致するというものではなく、逆に過去の供給例に対し今の需要が適合するという事も確実ではないのである。
需要はその時々の諸条件を基に創造され、その時の供給に合わせて消費が起きていくものである。つまり繁忙期と非繁忙期の比喩で例えると、繁忙期の時の需要と非繁忙期の需要は形こそ同一であっても中身は別物であり、それは供給においても同じことが言えるのである。需要も供給もその時々で姿を変え、刻一刻と変化をしているためその瞬間に合わせたビジョンを持たなくてはならない。また、この緩やかな流れの動向の中でこそ本来の需要というものが見えてくるのではないだろうか?