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第九の鉄人
神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)
負債に見合う不動産の獲得
バブルの時購入した投資マンションが、1/4に値下がりし、考えるのもおぞましい、その気持ちは私自身よくわかります。
私自身本当に笑みを忘れた数年間を過ごしました。
でも嘆いていても問題は何も解決されません。
鍵は実現可能な対策方法です。
悪い例ですが、私が近年投資マンションを購入した相手に多いのですが、投資マンションという悪夢は一刻も早く忘れたいということで、当時2000万円で買ったものを500万円で売却し、残債の1000万円は貯金をはたいて繰り上げ返済してしまうというものです。この場合、市場価値が500万円しかなくなったマンションの1500万円の残債に対し、ローンを払っている事実が無くなるので確かに気持ちの上では楽になります。
しかしこの対応は含み損を顕在化させ処分しただけで完全に敗北を認めたことにほかなりません。
私の場合も一時は敗北感に打ちのめされましたが、なんとか未来に希望が持てるような挽回策を考えました。
そこで思い付いたのが、まず10年後を目的とした負債に見合う不動産の獲得でした。
つまり、1/4の価格になっている不動産のローンを払っているのなら、不動産数を4倍にしてしまえば、保有不動産の価値と、負債の額が見合うではないかということです。
とはいうもののいくら1/4の価格になっているとはいえ、現在保有額の3倍のものを現金で買うほど資金は無いし、月々のローンの支払いを増やせるほどの余裕もありませんでした。
そこで手持ち資産を頭金にして10年ローンで家賃とローンの支払いを均衡させ、持ち出しを増やさない方法を選んだのです。
これにより、一時的に債務は増えますが、10年後追加購入分のローンが終われば、保有不動産価値と、残債の価値が均衡し、フローも改善できるというものです。
例をあげれば:
(事実)2000万円で購入したマンションが500万円になっている。
(対策案)500万円のマンションを3戸購入すれば、負債に見合う合計2000万円の不動産を保有できる。
(行動)600万円(200万円×3戸)を頭金にし、900万円(300万円×3戸)の10年ローンを組み3戸購入する。月々の持ち出しは0円とする。但し、負債は900万円増加し、一時的に2900万円になる。
(結果)10年後900万円分のローンは終了し、残債は2000万円となり、マンションは500万円のものを4戸所有している状態となる。フローも追加で購入した分が純増となり、大幅に改善され、投資額(債務)に見合った収入が確保される。
(今回、話を簡単にするために残債の元本減少分は無視した。実際は最終的な残債は2000万円より少なく有利となる。また不動産価格も一定とした。当然値下がれば不利となるが、現在価格から大幅に下がるより、多少上がる可能性の方が高いはずである。)
最初に紹介した1000万円の貯金をはたいて何も残っていないのと、最初の債務はあるものの600万円追加投資し、2000万円相当の不動産が残り家賃収入があるのとではバランスシート上大差はないにしても、計画を撤退したのと、立て直ししたのとで、気持ちの上での差は歴然ではないでしょうか。
少なくとも家賃収入を老後の足しにしようと考えた初心は貫けたことになりますから。
この方法は、サラリーマン程度の年収では5000万円程度の負債までの人には非常に有効だと思います。
もちろん家計を緊縮財政とする等して追加資金を確保してきた人で追加融資の受けることのできる人の場合です。
個人個人の状況は、千差万別なので自分の数値で実際にスタディされると良いと思います。
以上の紹介は債務超過の解消でしたが、なにもそれ以上買ってはいけないというものではありません。現に私などバブル崩壊のおかげで緊縮家計がしみ付き、浪費が減ったものですから、頭金が貯まる毎に買い増ししております。
ところで話は変わりますが、私は現在帰国したとき交代の人に譲ってもらった10万円の車にもう4年も乗っています。10年前は400万円の車に乗っていました。
現在、私は色々な対策が功を奏し、財務状況は回復しております。
しかし私は、バブルでの失敗を戒め、忘れないための臥薪嘗胆ということで、あえて古い車に乗っております。
私は、もし今回の方法で債務超過を解消された方にバブルの崩壊の失敗で学んだことを忘れないで、各人なりの臥薪嘗胆の方法を決めて欲しいと思います。
人間本当に喉元を過ぎると熱さを忘れます。なぜわざわざこのようなことを言うかと言いますと、不動産投資をされるような人は元々肝が太く、失敗から立ち直ると往々にしてより大きな火傷をしてしまう傾向があるからなのです。
最後に、40代の人に一言言っておきたいと思います。
40代は定年まで10年以上あり、まだローンが比較的簡単に組めるので上記のような対策が打てます。
しかし、50代となると状況はだいぶ悪くなってきます。
正直なところ50代の人は定年までの残り年数でローンを組み、定年後いかに家賃収入を確保するか、あるいは手持ち資産の形態を利回りの良いものにシフトさせるかに絞られてきます。
50代の人には申し訳ないのですが、ようするに40代の人に40代が最後のチャンスで、50代となると、いろいろと制約が出てきて、量の拡大がかなり厳しいですよ、ということなのです。
もちろん、これは一般論で、個別状況は異なり、状況に応じた資産の拡大化をはかるプランは作成できますが。
とにかく、効果的な戦略をスピーディに実施することです。
そうすれば失敗は徐々に取り戻せるし、量的拡大も可能になります。
もうバブル崩壊から8年たったのです。
まだ何も対策していないとするとひどく出遅れてしまっているのです。
含み損を持たない下の世代は、我々より遥かに有利な立場にいるのです。
下の世代の豊かな老後を見ながら質素な老後ではあまりに惨めすぎます。債務超過を解消し、アッパーミドルとしての恒心を取り戻して頂きたいと思います。