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第九の鉄人
神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)
皆さん、日本に何人の億万長者が居るか知っていますか?そう 120万人いるそうです。これでも世界には700万人しかいないそうなので国としては多いそうです。
ところで、何か皆さんなにか億万長者なんて自分とは関係の無い別世界の事のように考えておられますね。金持ち父さんを読むように言ってもそんな事は自分にはできないとか、キヨサキさんが本の中で言われているその通りの返事が返って来るのには驚きます。私がエッセーを書くのをやめたのは金持ち父さんに言いたい事がみんな書いてあるからなのです。でも、色々な人に質問されて、私は気付きました、多くの人は読んでも読めずで本の内容がくみとれていないという事を。まあ、そういう事も有りまた筆をとっているしだいです。
まあ、私は幸い英国での駐在経験があるおかげで、西洋の状況の中で彼の言いたい事はわかりますが、日本の不動産事情は西洋のように単純でないのは事実です。しかし、肝心なのは彼が言われているように億万長者になるのは考え方だけで簡単なものだという事です。
例えば22歳の新卒の人が52歳で億万長者になるというシナリオはばかみたいに簡単です。思い切り簡略化して言えば1億円の投資不動産を30年のローンで買ってしまえば良いのです。ザッツ イット。 30年後ローンが終れば1億円の不動産が残ります。売れば1億円の金融資産に変える事もできます。
もちろん、1億円の借金ができるのかとか、不動産の価値が下がっているのではないかと反論は色々できるでしょう。ここで、こういう達成すべき課題をできない理由にする人は当然億万長者にはなれないでしょう。億万長者に成れるのは課題をどうすればできるかと一つ一つ実現可能なアクションプランに落せる人です。実際に考えてみるとわかりますが大きな目標もブレークダウンして行くと不思議なもので、実現可能なプランになって来るものです。
そしてできあがったプランですが、できてみれば平凡なものでしょう。IBMのガースナーさんが言われています、戦略なんてみんな似かよったものだ重要なのはやり遂げる事だと。桶狭間・鵯越などという奇策はそう簡単にはできません。まあ、これができる人は株を公開して100億万長者になれる人です。こういう事は、そう誰にでもできる事ではないでしょう。凡人は亀のようにプランを実行して行けばゆっくりではあっても億万長者になれるというそれだけで良いのです。
とにかく執拗にやり抜くのです。天国と地獄の分かれ目だと思ってください、大げさな話ではありません。やり抜けば先は桃源郷なのです。
正直私も競売不動産の不法占有者や入居者の夜逃げや家賃の滞納にはまいりました。もう甲羅から首を出すのが厭になった事が何度も有ります。しかし、好きで始めたのだろう、勝つ為にはやるしかないと自分を鞭打ったものです。
そう、不動産投資で一番皆さんが嫌がられ挫折されるのが家賃の滞納です。現在、長引く不況で10%の貸家が滞納を抱えていると言われています。まあ、最終的に出て行ってもらうしかないわけですが、ワンルームマンションであれば家族を追い出すと言う悪行をしなくて済むのが幸いなところでしょうか。都内では家族のホームレスも見かけるそうで、本当に可哀想な事だと思います。
次は実行です、まあ、クオンタムファンドのソロスさんが言われるように思ったようにならないと言う事を覚悟して行動して行く事です。人間は思った事が逆に行ったりするとそれは狼狽するものです。しかし、焦ってはいけません、傷を深くするのが関の山です。ベアリングの破綻などどんどん深みにはまって行った典型でしょう。とにかく状況に合わせてアジャストするしかありません。
ただ、以前敵を知り己を知れば・・・で言いましたが、プランはもちろんまずその仮説において利益を最大化できるように作らなければいけません。しかし同時に、その仮説が外れた時に何が起こるかも考えないといけません。そういうふうに考えていると利益は最大ではないが、仮説が外れてもアジャストが容易という案も出てくるものです。前もって予想していた外れのケースであれば落ち着いて対応できます。まあ、実際には往々にして予想もしなかった事が起こるものですが。
為替が長期的には円安になり輸入インフレが起こる事に反対される人はいないでしょう。不動産投資において皆が知りたいのはその時不動産価格も上がるのかどうかという事に尽きると思います。私も従来は何の疑問も無く不動産価格も上昇すると信じていました。しかし、現在言い切る自信がありません。私が英国の不動産動向をリーを通して調べているのも、日本で価格が3倍になるような事が起こるかどうか知りたいからなのです。
さて、こういう難問に突き当たった時に皆さんならどういう仮定をされるでしょうか?上がると仮定されますか、下がると仮定されますか?上がると仮定して上がらなかったら完全な敗北です。そうなのです、上がらないと仮定すべきなのです。この場合もし上がっても利益が増えるだけで何のデメリットもありません。あまりに高額であれば相続税の問題が出るかも知れませんが贅沢な悩みでしょう。その時に考えれば良いのです。
さて、価格が上がらないとしたら、どうやって利益を出すのでしょうか?利益を産まない投資は資本主義社会では不良資産です。そうなのです、家賃から利子や固定資産税等の諸経費を引いても黒字になるようにするしかないのです。
こうやって、冷静に論理的に考えて行くと選択肢として中古物件しか上がって来ないのです。将来の価格上昇のみに期待した不動産の購入がいかに脆弱な仮説の上で成り立っているか少しは理解して頂けたのではないでしょうか。
蛇足ですが、では当面の収益が出ていればそれで良いのかと言うとそうではありません。資産の劣化について考慮する必要があります。現在の入居者が出たら廃屋となるようなアパートがいくら安く高い利回りでもお買い得でないのは明白です。値段に釣られないように注意してください。実際現在日本には1200万戸の貸家が有り、半分は空いているのです。なんとも怖い話だと思われませんか。
おそらく、日本の景気は今後上向くでしょう。しかし、これまでの景気回復のパターンを当てはめるのは危険です。私はおそらく米国と同じようにジョブレス リカバリーになると思います。とにかく企業の収益・効率化に対する姿勢には恐ろしいものがあります。もはや人口の半分以上を占めるワーキング クラスに潤沢に金が流れる事は永遠に来ないでしょう。なにせ、グローバルでの賃金の平準化の目標が今や中国になってしまったのですから。
そういう事でとにかく、当面の家賃の下落に対して耐える事のできる余裕を持つ事です。購入時にギリギリで資金繰りを組んではいけません、入居者が変われば1万円は簡単に下がるご時世だという事は知っておいてください。
私も2~30年後不動産価格が上がってハッピーとなりたいと思います。そして、実際に上がると思っています。それが倍か3倍かはわかりませんが。
おそらく、本当に地獄を見る事になるのはインフレ ヘッジをしなかった人達でしょう。でも、奢れる者は久しからず、消費は常に資産選好を考えて行う事も忘れないでください。
『美への傾倒は衰退する力の兆候。』ニーチェの有名な言葉ですが、最近日本人が非常に洗練してきたように感じます。おそらく日本は確実に衰退に向かっているのでしょう。