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第九の鉄人
神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)
馬を川まで連れて行く事はできても水を飲ませる事はできません。私のエッセイを読んでも投資を始めるかどうかの最終決断は皆さんがしなければいけません。
一方、人間は追込まれるまで判断しないものです。10年くらい前まで日本の経営者は追込まれないと判断しない、そんなものは決断ではないなどと批判されたものです。老練の経営者だってそうだったのです、どうしてまだくちばしの黄色い皆さんにそんな人生を左右する決断ができるでしょうか。先送りして忘れてしまうのが関の山でしょう。
そもそも、何が信じられるというのでしょうか。デカルトが方法序説で言っているように若者は最初何が信じるに足るかさえわからないのです。どうしていかがわしい響きを持つ不動産投資を真剣に考える事ができるでしょう。
なぜ、多くのインテリがオウム真理教に騙されたのでしょうか。私はオウム真理教が世間に出始めた時、それまであまり語られる事のなかった仏教哲学の要点をわかり易く公開した事に驚きました。多くの人が感銘を受けた事は容易に想像できます。問題はその未知のものに触れたという知的昂揚に乗じ、真理の中に嘘を巧みに混ぜ合わせた事です。
この手の騙しは仏典の中でも修行中の釈迦を騙そうとするダイバダッタの話で紹介されています。つまり、90%の真実に10%の嘘を混ぜる、これこそが最高の詐欺なのです。
正直、皆さんが不動産投資といって身構えられる事はよくわかります。私自身、マルコーの海外不動産投資、ビバリーヒルズ ショッピングセンター・ ハイブラフ オフィースビル・ アストンカイワイ リゾート ホテルで自宅を担保にして借りた3000万円が水泡に帰したからです。それもその後の裁判で明らかになったのですがマルコーはいずれ行き詰まる事を知りながら販売していたのです、とんでもない話です。不動産投資に限らず、現在も似たような話がごろごろしています。資本主義社会というのは仕組みをよく知らないと本当に恐ろしいと思います。たかが数十戸のワンルームマンションを売るのに新聞に億の単位の広告を出して収益が成り立つのか?そういう疑問に気付けるようになるにも時間がかかるものです。
触らぬ神に祟りなし、もし現在の生活水準が維持できるのであればそれが正解でしょう。
そう、問題は将来の収入なのです。私は1981年に就職しましたが、毎年源泉徴収表を貰う毎に年収をグラフに書き込んでいました。それは確か10年くらい7%程度の右肩上がりでした。そして、現在の給与収入は恐るべきことに15年前の収入と同じなのです。正直、同じような境遇の人達はよく生活できているなあ?と不思議に思います。皆さん、恥をしのんで私の例を紹介しましたが、他人事ではありません。
まあ、私には幸い家賃収入がありますので、最近の給与収入は全て楽天で宝飾品に化けていますが。
冗談はさておき、最近、ビジネス書を読むと『変わらなければ生き残れない。』という話ばかり出てきます。もう耳ならぬ、目にたこができるというところでしょうか。なぜこういう事が多くの経営者の口から出るのでしょう。
5年くらい前になりますが、ジャック ナッサー 前フォード社長の全ての競争環境が激しくなるというフォードのグローバルレポートを紹介しました。そして、彼の予想通り世界の競争環境はその後もどんどん激しくなって来ました。そして、日本にもゴーンさんという生粋の資本主義のDNAが導入されてしまいました。もう、日本も東洋の変わった国という事では済みません。現実の話として過去数年で、日本のビジネス環境はおそろしいほど変わって来ました。そしてもはや、後戻りする事は無いでしょう。
しかし、誤解してはいけないのは、変わる、変わらないはあくまでも組織の話です。皆さんも気付かれているでしょうが、大人になった個人はそんなに変われるものではありません。数十年生きてきた人間を変えるというのは、30万tタンカーの舳先を押して向きを変えるようなものだと昔誰かが言われていましたが、確かにその通りだと思います。
進化論というのは、種のグループとしての存続であり個体の存続ではありません。ある選択圧において生き残った個体がその後の歴史を作って来たのです。現在企業にはこの選択圧がかかっているのです。つまり、今後企業という種のグループにおいて起こる事は個々の個体の変化では無く、不適応個体の退場です。
そして、もし企業という種のグループ全体が選択圧に耐えきれなければ、竹中大臣が言われるように企業自身が市場からの退場をよぎなくされてしまうのです。
次回part2に続く・・・