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第九の鉄人
神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)
最近、日本では金融不安が去り投資向け不動産の掘り出し物がだんだん減ってきております、そういうことで私も時間的余裕ができたので以前より少し気になっていた英国の不動産の情報を取り寄せて分析を行いました。私が駐在していた時の部下で私のエッセイの内容を実践しているリー君がしばしばEメールで連絡してきてくれていたとうり’96年から4年間で6-10割値上りしていることを自分で確認できました。価格的にはちょうど現在’89年のピーク価格に戻ったようです、しかし大手金融機関は今年も更に1割の上昇を予想していることがわかりました。
はっきりいって今回こういう事実をまのあたりにして、更なる価格低下にびくびくし電卓をたたきながら購入可否の検討をしている自分がなにか情けなくなってきました。景気後退の中でいかに自分のマインドも後退していたか気づきました。景気拡大時は本当に雰囲気も明るかったものです。しかし今回の英国での価格高騰については「こんなことが先進国で本当に起きるのか。」というのが正直なところです。退職後、私の自宅のあるFurzton Lakeの湖畔に数件買い増して日本人留学生向けの借家をやろうという計画が暗礁に乗り上げてしまいました。当時1500万円程度だったのに倍以上になってしまうとは、本当に後の祭りです。でも、値上りして買えないという気持ち自身すごく昔のような気がします、今回の日本のリセッションがいかに長いかということです。
この件で、私は日本のバブルが崩壊し失意の中で読んだガルブレイスの「バブルの物語」を思い出しました、バブルの前に読んでいればこんな馬鹿なことはしなかったのにと後悔したものです。でも英国では10年を待たずして価格の高騰が現実に起きています。いかに人間というものが理性を失い流されやすいか思い知らされました。リー君は「含み損というものは英国には既に存在しない。」と言っておりました。まだ私自身他国のことなので理性を失っていませんが、日本で起きた時に果たして理性を維持できるのか正直自信が無くなりました。熱狂した場の雰囲気というのは本当に恐いものです。
また今回、価格の上昇にももちろん驚きましたが、もっと驚いたのは不動産投資ブームがおきていることです。英国のいたるところで金融機関主催の投資セミナーが開催されているのです、おもわず10年前の日本を思い出し苦笑してしまいました。でも本当にラッキーだったのはリー君です、誰も投資などしていない’95年からはじめたものですからすっかりトレンドリーダーになってしまったのです。なんと36歳で14戸の投資不動産を手に入れてしまったのです。含み益で約5500万円です、なんとうらやましい話ではないでしょうか。いまでも「億万長者へのパスポート」と「にわとり算」という私のスタディを冗談まじりに話したのをよく覚えています。
話が少しそれましたが、面白いのは投資セミナーが実施されている時期です。価格上昇から4年以上経っているということは、既にトレンドセンターからフォロアーが参加してきている時期と考えられます。そういう時期にセミナーに参加して投資を始めてもおそらく大きな利益を上げることはできないでしょう、それどころか損をする可能性の方が高いかもしれません。主催している銀行だって不良債権になってしまうかもしれないのです。そうブームになり大勢がやり始め安全と思われた時には既に遅いのです、なんとも皮肉な話です。これはなにも不動産投資に限った話ではありません、リスクの高い時期に始めた先駆者が最も大きな利益を上げることができるのです。
私は、これは人間の持つ変な習癖が原因だと思うのですが、人は多くの他人がやっているかどうかを判断基準にするというところがあります。自宅のためには3000万円のローンを組む事はなんとも思わないのに、500万円の投資マンションのために借金をすることをためらうというような具合です。もう既に常識で勝てる時代ではありません、「桶狭間」、「ひよどり越え」の発想が必要です。世の中の中央値がリスクテイク側に動いていますので一度自分自身の判断基準をリスクテイク側にリセットされることをお薦め致します。
次回part2に続く・・・